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  [ 君とは幸せになれない 28 ]
2013-05-22(Wed) 05:00:00
僕達は、時間を合わせて仕事を上がった。
向かった先は、もちろん僕の家である。

「大津さん、ごはんって作るんですか?」
ジャンバーを脱いでバッグをソファに置いてから、
台所にきた藤ヶ谷君が、そう訊ねる。

訊ねたくなる気持ちも判らなくはない。
レストランや居酒屋はもちろん、
スーパーにさえ振り向きもせず家へ帰ってきたからだ。

僕は、持っている紙袋を見せてあげた。
「そのつもりだよ。これでも自炊は得意なんだ。
 ほら、オルテンシアから少し材料を持ってきてある。
 そろそろ新しいパスタを考えようと思ってね」

紙袋の中身は、スパゲッティ、マカロニ、
ラザーニャ、ラビリオの4種のパスタが入っている。
それに、ベーコンにトマトに生クリーム、
それ以外にもたくさんの材料を、ここに詰め込んできた。

「新しいパスタを考えるんですか?」
「そうだよ。店長は半年に1度、
 新しいメニューを考えて、それを本部に報告するのさ。
 美味しいか不味いかは、また別の話だけど」
「面倒臭いですね店長業って」
「だから、僕はこんな役職に就きたくなかった。
 けれど仕方がない。楠さんが僕のことを推したからね」
「ああ。楠さんに推されたら、しょうがないですね」
「やっぱりそう思うだろう?」

僕達は、楠さんの秘めた怖さを知っている。
だからこそ、ここは笑うところなのだ。

紙袋の中のものを台所に出してから、
ぐいっと僕は腕まくりをした。
「そういう訳だからね、
 藤ヶ谷君にもちょっとは協力してもらうよ」

藤ヶ谷君は、げんなりとした。
昼食のまかないだってパスタ料理だったというのに、
こんなことが待っているとは思わなかったろう。

でも、藤ヶ谷君がいるだけで心強かった。
誰かがいたほうがやる気になれるし、
誰かがいたほうが楽しいに決まっている。
相手は、こちらのそんな思いなど知らないだろうけど。

「美味しいパスタが完成したら、
 あとで体を洗ってあげよう。
 丹念に、丁寧に、しっかりとね」
そう言って笑うと、風呂のシーンでも妄想したのか、
藤ヶ谷君は赤面した。

そんな顔を隠すように背を見せた。
そして、少しばかりムキになったような声で、
僕へこんなことを言ったのだった。
「別にそんなことの為に、
 頑張ろうなんて思ってませんから」

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