2013-07-10(Wed) 05:50:00
真っ赤な目を擦り、彼はシャワーから戻ってきた。
そして、僕を見ないように目を逸らしたまま、 ベッドに潜ってしまい、ばさっと体に布団を被せた。 彼の体が、震えているように見える。 ぬるいシャワーでも浴びて冷えてしまったのだろうか。
「寒いのかい?」
僕がそう訊ねると、彼の頭がゆっくり横に振られた。 いつもの彼らしくない。 いつもだったら、セックス後でも笑っていて、 疲れたような素振りも見せないのに。 さすがに、さっきのはやりすぎたのだろうか。 彼の髪に、そっと触れる。 しっかりタオルで拭いてきたのだろう、 そんなに濡れていなかったし冷えていなかった。 しかし、まだ震えは続いている。 「僕とまたシャワー浴びないかい?」 「いい」 「戻ってきてから震えっぱなしじゃないか」 「いい」 「何かしちゃったかな僕?」 「違うからシャワー浴びてきて」 布団を頭まで被って、僕の心配を拒む。 これ以上、僕にはどうすることもできないと思い、 言われた通り、シャワーを浴びることにした。 風呂場は、温かくて湿っていた。 浴室暖房も、ほんのりと残っている。 シャワーの温度も42度に設定されており、 体が冷えるどころか心も温まりそうだ。 シャワーを浴びて戻ると、彼はまだ震えていた。 「僕も布団に入るよ?」 とりあえず、言ってから布団に入らせてもらう。 すると、彼の体が、びくっと怯えたように震えた。 彼の震える背を見ながら、静かに横になると、 ひっく、という声が聞こえていた。 驚いた僕は、彼の肩を掴み、体をこっちに向ける。 予想通り、彼は手で口を押え、涙をたくさん流しながら、 苦しそうに泣いていた。 次話へ 前話へ お気に召しましたら一票お願いします。 |