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  [ 君とは幸せになれない 55 ]
2013-07-21(Sun) 07:20:00
愛の言葉を囁くも、腹は減る。
彼がベッドで目にタオルを当てている間、
僕はせっせとごはんを作った。

朝食は、いつも通りのお粥だ。

疲労した肉体には、ほのかに甘いお粥が合うのだ。
それに、彼がこれを好んでいる。
美味しいと言いながら笑顔になる、
そんな彼のことを考えながら、せっせと用意をした。

用意後、ベッドにいる彼に声をかける。
その頃には、タオル下の腫れが引いており、
いつもの彼の顔に戻っていた。

2人での朝食は、これまでの朝食より充実していた。

喋らなくても楽しい。

一緒にいるだけで幸せな気持ちになれる。

目が合うだけで心が繋がる。

こんなことが僕に起きるなんて夢を見ているようだ。

お粥半分で、彼の手が止まる。
俯いてしまった彼が、
かたかたと箸を鳴らしながら体を震わせていた。

「どうしたんだい?まずかった?」
そう訊ねるも、彼が首を横に振る。

お粥は、いつも通りに作った。
僕がこうして食べても、味には変わりない。
それなら、彼はどうして食べないのか。

ゆっくり上げられた顔は、耳まで真っ赤だった。
困ったような、嬉しいような、難しい顔をしながら、
彼はこんなことを言ったのだった。

「ごめん。まずいんじゃないんだ。
 幸せで嬉しくて‥どうすればいいか困ってた‥」

彼の表情は、僕の気持ちを、
ふわりと暖かいものに変えてくれる。
その暖かいものを確かめるように、
胸元を握りながら笑顔を返すと、
難しい顔も解れて、すぐに笑顔に変化した。

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