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  [ 君とは幸せになれない 56 ]
2013-07-28(Sun) 05:35:00
幸せなごはんを終わらせて、
彼は講義の為に、名残惜しそうに出発した。
出発前、子供のように駄々をこねたり、
ぐずっていたりしていた。
どうやら僕から離れたくなかったらしい。

こんなに甘えん坊だったのか。
驚きもあったが嬉しさもあった。
しかし、講義は大切だと真剣に説得し、
もういいと言われるまで彼にキスをして、
玄関にて見送った。

好きになると煩わしいと思うところも、
愛おしさに変わってしまう。
恋のパワーというものは恐ろしい。

しかし、いつまでも幸福気分ではいられない。
僕も、これから仕事がある。
身支度し、オルテンシアへとむかう。

いつもの早番メンバーに挨拶していると、
みんなして、あれっと首を傾げるではないか。
首を傾げるだけで何も言ってはこない。

「大津さん、いいことありました?」
唯一、古株である林君が、
こっそりと僕にこんなことを聞いてきた。

「え?どうしてだい?」
「あの、ずっとにこにこしてますけど」
「いつもと変わらないと思うよ」
「いや、はい、いつも笑顔ですけど、
 幸せオーラを放ってるような気がするんです」

あ、と僕はつい固まった。
それが、林君やみんなへの確信になったらしい。

「変なこと聞いてすみません」
「こちらこそ済まなかったね。
 みんなにも気を遣わせてしまった」

みんなに謝ってからトイレへ入った。
自分ではそんなオーラを目視できないが、
言われてみれば確かに、顔や目が、
いつもより緩んでいるような気がする。

だって、これはもうしょうがない。
彼もそうだったが僕もとても幸せなのだ。
顔を引き締めろ、と言われても今はできない。
オーラも、しばらくは放ち続けるのだろう。

それでも、彼とのことを悟られないようにしよう。
そう思いながらトイレから出た。

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