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  [ 君とは幸せになれない 58 ]
2013-08-09(Fri) 05:40:00
八重さんと一緒に、カフェにいる。
どうやってここまできたのかすら、
記憶にないほど動揺していた。

テーブルにあるコーヒーは、
アメリカンなのかブレンドなのか。
何をオーダーしたのかすら覚えていない。
コーヒーに口をつけても、
味もあんまり判らなかった。

どくんどくん、と胸の音が耳に響く。
汗も、じわりと額に滲んでいた。
それほどまでに、かなり動揺している。

「公ちゃん、元気そうね」
「ええ‥」
「ネームプレートに店長ってあったけど、
 あそこで店長しているの?」
「はい‥」
「そう。すごいのね」
八重さんは微笑んで、ジュースを飲んだ。

実家は、昔から日舞教室を開いている。
僕がまだ小さい時から、かれこれ何十年もやっていた。

僕が高校生の頃、教室へくる人物がいた。
それが当時23歳だった、八重さんだ。
子供はいなかったけど結婚していて、
妙に色っぽかったのを未だ覚えている。

憧れの人で、見ているだけで心が弾むようだった。
たぶん、僕は、恋していたのだと思う。

少しずつだけど話すようになり、ある日になって、
家に遊びにこないかと僕を誘ってくれた。
遊びに行くと、ベッドに押し倒されて体を求められた。

いや、求められたと言うよりも、
襲われたと言うべきだろうか。
なんせ僕には、怖かった記憶しか残っていない。
初体験は、恐怖のまま終了し、
トラウマにまでなってしまった。

以来、セックスは同性としかできない。
僕が僕らしく生き抜くためには、
それでいいんだと言い聞かせていた。

恋心は抱けないが女性と喋ることはできるし、、
僕は幸いなことに兄と姉がいて、どちらも結婚している。
内孫も外孫も、日舞を習っており両親も喜んでいる。

仕事が多忙だというふりをすればいい。
結婚に興味がないふりをすればいい。
そうして、僕はひっそりと過ごしていた。

そんな気持ちで日々、パスタ店に勤めていたら、
八重さんととんでもない再開をしてしまい、
こうしてカフェで2人きりになってしまった。

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ありがとうございます!
今後もマイペース更新にはなりますが、
お付き合い頂けると幸いです。


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