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  [ 君とは幸せになれない 62 ]
2013-08-21(Wed) 04:30:00
楠さんをリビングへ招いた。
座るよう促し、僕も座る。
そして、お茶ぐらい淹れようと思った。

「あ‥今すぐにお茶を持ってきます‥」
「いえ、いいんですよ」
「そういう訳にもいきません‥」

立ち上がろうとして床に倒れそうになった。
ほとんど何も食べていない僕の体は、
ふらふらして立ち上がる力が入らなかったのだ。
そんな僕を支えたのは、隣にいた楠さんだ。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫です‥すみません‥」

とても心配そうに、僕の体を支え、
楠さんがゆっくりと座らせてくれる。
優しさが嬉しくて、僕なりに笑ってみせた。
笑ったら楠さんも笑ってくれた。

「大津さん、風邪ですか?」
「ええ‥まあ‥」

風邪で欠勤、ということにしている。
それならば不自然ではないし、誰だってこれで休む。
欠勤の本当の理由を、言えるはずもない。

楠さんがビニール袋をテーブルに置く。
袋の中に、ゼリーやヨーグルト、インスタントのものや、
パンなどが詰め込まれていた。
近くのコンビニで買ってきたらしい。

「お見舞いです。食べて下さい」
「ありがとうございます‥」

それを見ても、食べたいとは思わなかった。

食べてもきっと吐いてしまう。

僕がしてしまったことに耐えられなくて。

そう思うと、また吐き気を催して、
口を塞いだまま僕は立った。
「すみません‥ちょっと失礼します‥っ」

楠さんをリビングに残して、トイレに駆けつける。
胃は空っぽなのに吐き気だけはあり、胃液を嘔吐した。
やっと胃の痙攣が収まって、僕はリビングに戻り、
さっき座っていたところにまた座った。

「お恥ずかしいところを見せてしまって‥」
「いいんです。気にしないで下さい」

楠さんは言いながら、ハンカチを取り出して、
僕の口元を拭う。
その優しさに、じわりと胸が熱くなった。

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