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  [ 君とは幸せになれない 63 ]
2013-08-22(Thu) 06:50:00
相談したかった、白状したかった。

この人なら全てを聞いてくれる。
そして、僕のことを正しいほうへ導いてくれる。

判っているのに怖くてできなかった。

すると、僕の口を拭い、楠さんはこう言った。
「大津さん、苦しみを共有できる人はいますか?」

僕は質問に対し、いるともいないとも答えられなかった。

いることはいるが、彼にこんなこと言えるはずもない。

真実を告げたところで過去は変えられない。
今すぐにでも別れたとしても、
親子なのだという事実と、恋人だったという事実は、
お互いにずっと残ってしまうのだ。

それに、彼は若い。
僕でさえキャパオーバーして抱えきれないのに、
彼に抱えさせるなんて酷い話だ。

楠さんはどこまで察したのだろう。
僕の心の中を、見透かそうとしているかのような眼光に、
目を伏せながら僕は答えた。

「判りま‥せん‥」
「では、インフルエンザにしましょう」

言っている意味が判らなかった。
僕がそう思ったのを察して、楠さんは続ける。
「欠勤の理由を、インフルエンザということにします。
 もう3日休んでますから、あと4日休んでもらいます。
 4日間、問題がそれでも解決しないなら、
 辛いとは思いますが、私に全てを打ち明けてもらいます」

インフルエンザだと1週間欠勤しなければならない。
それが、条件つきで付与された期間となったのだ。
インフルエンザでも何でもないのだから、特別な措置だ。
そして、これこそが楠さんの優しさだった。

「それで構いませんね?」
「はい‥ありがとうございます‥」

僕がそう言うと、楠さんは眩しそうに笑った。

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