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  [ 君とは幸せになれない 65 ]
2013-09-04(Wed) 06:50:00
彼が居間に座る。
怒っているような呆れているような、
むすっとした顔をしながら。

「僕はインフルエンザで休んでいるんだ。
 うつしたくないから早く帰ってもらえないか」
彼から距離を置いて、僕も座る。

僕の目は、もちろん彼のことを見ていない。
見ようがないし、見ることができない。
今どんな顔をして、彼のことを見ればいいのか。

「それウソだって判ってるから」
「そうかい。それでも調子よくないんだ。
 今すぐにでも帰ってくれないか」
「話があって家にきた」
「こっちには話すことは何もないよ」

どん、とテーブルが強く叩かれた。
僕は驚き、つい彼のことを見てしまった。
彼はテーブルに拳をついたまま震えている。
俯いていて表情は見えなかった。

「母さんから聞いてきた、全部」
震えた声で、彼が言う。

そうだろうと思っていた。
だが、聞いたから何だと言うのだろう。

聞いたって過去は変えられない。

悔しいのは彼だけじゃない。

「そうかい。それなら話は早いだろう。
 話すことは何もないんだ。
 判ったらさっさと帰りなさい!」
どかん、と強くテーブルを叩いた。
古びたテーブルが壊れそうなほど軋む。

だが、彼はそれでは怯まなかった。
「帰らない!話があるから!」

顔を上げないまま彼は言った。
その口調には、とても強い決意が込められていた。

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