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  [ 君とは幸せになれない 66 ]
2013-09-13(Fri) 05:50:00
「母さんはもう長くないんだ」
彼の声に、僕の目が開く。

意味がすぐには理解できなかった。

開いた目に、彼の顔が映る。
さっきと変わりなく、
怒っているような呆れているような、
そんな顔をしていた。

いや、決意というか決心というか、
そういう思いがあるような顔つきだろうか。
彼の瞳が、とても強く光っている。

「それは‥どういう‥」
「母さんは心臓病を患っている。
 長くないって告知も受けているんだ。
 だから、公明にあのことを告白したんだって。
 俺に親戚いないから、俺が1人になるから」

公ちゃんには知ってほしかったの、
という八重さんの台詞が、ふと頭を過った。

母親である自分は、近いうちに亡くなる。

親戚のない息子は、そうしたら孤独になってしまう。

だから、学生である息子のことを、
可能であるならば見守ってやってほしい。

貶されようとも、怒られようとも、
あれは、母親として最後かもしれない行動だった。

心の中が、ぐちゃぐちゃになる。
八重さんの気持ちと、告白されたこっちの気持ちが、
きちんと整理できない。
感情の制御が、コントロールできなくなる。

「でも、だからって、よりにもよって、
 恋人になった翌日に、そんなこと聞きたくなかった!」
テーブルに置いてあったコップを投げつけた。
彼の顔の横を飛び、壁に当たったコップが砕け散る。

彼は驚かないどころか僕を見つめて、
そして、ぎゅっと僕の体を抱き締めてきた。

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