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  [ 君とは幸せになれない 67 ]
2013-09-17(Tue) 05:35:00
「判ってるよ。俺もそうだから。
 母さんのこと許せないって思ってるよね。
 ごめんね、公明」
「謝られても過去は変わらない!」
「謝るついでにお礼も言わせてもらう。
 ありがとう、公明」

抱き締めてくれている彼の手の、力が増す。
僕は、どうしてお礼を言われたのだろう。
全くもって判らないし判りたくなかったが、
答えはすぐに聞けることになった。

「公明がいたから、俺はここにいる。
 公明がいなかったら、俺はここにいなかった。
 だから、ありがとう」

笑顔と言葉で、ぶわっと涙が溢れてきた。
そして、僕は、情けないほど泣いた。

僕はきっと泣きたかった。

泣けなくて怒っていた。

怒ったらますます収まらなくなってしまった。

彼が、泣くためのきっかけを与えてくれた。

ずっと、僕が悪いのだと心で考えていた。
けれども、それぞれの色んな思いがあって、
こういうことになってしまったのだ。
だから、僕も、彼も、誰もきっと悪くない。

泣いたからって解決する訳じゃあない。
しかし、泣くことによって気持ちが軽くなっていく。
周りの誰もを、許せるように思えてくる。

「ありがとう、公明」

ぽつり、と囁くような声。
それは間違いなく、泣いている声だった。

話があるから帰らない、と言った彼。

きっと、ありがとうと言いたかったのだろう。
あの時のあの声には、とても強い決意が込められていた。
ようやく、どんな気持ちで、
彼がここへきたか判ったような気がした。

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