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  [ 全てを任せてキスをする 2 ]
2014-01-30(Thu) 06:00:00
式場は、八重さん自身が、
生きている時から決めていたらしい。

病院から式場への、連絡も搬送も、
見たことがないほどスムーズに行われる。
僕は、叔父という名目で、
彼の傍に、ただついているだけだった。

僕がこうして傍にいるだけで、
彼は心強いと言う。
それだけで、こちらも嬉しくなった。

遺言により密葬がされた。
八重さんも、八重さんのご主人にも、
両親はいないし兄弟もいない。
それでも、彼の家は、かなりの金持ちだった。
彼が大学を出て、しばらく仕事をしなくても、
暮らしていくには困らなさそうだ。

今日はすこぶる晴天だった。
立ち上る煙が、青い空へ静かに溶けていく。
八重さんの笑顔が、そこに浮かんだ気がした。

「バイト、しばらく休んでいい?」
煙を追いながら彼が言う。

「もちろん。どれくらい休みたいんだい?」
「1週間でも大丈夫?」
「シフトのほうは調整するから心配しなくていいよ」
「ありがとう。もう1ついい?」

黒スーツの彼が、僕を見る。
彼の目は、ほんの少しだけ潤んでいた。

「何だい?」
「休みの終わりに、遊びに行っていい?」
「ああ。待ってるから遊びにおいで」

彼の手が、僕の手に絡む。
僕は、その手を強く握った。

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