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  [ 青い空を見上げて2nd 35 ]
2010-07-13(Tue) 09:30:44
笹崎侑津弥


いつも通りの暑さだけど、晴天の金曜。
今日も、ジョーはミレトスを迎えにいっている。
俺はこれまでと同じ、一人で登校中だ。
正門前で、クレウスに肩を叩かれた。
「おはようデス、ウツミ」
「グッドモーニング」
片言の英語で、ぎこちなく挨拶してみる。

これじゃあ、どっちがどこの国の人か判ったもんじゃない。
俺達は、同じことを考えたみたいで、ぷっと吹き出した。

げた箱でミレトスとジョーにも会った。
「ウツミ、モーニン」
「おっす」
「おはよう、ミレトス、ジョー」

2人は、ジョーの元クラスメイトらしき人らと、
そこで立ち話を始めた。
邪魔にならないようにさっさと退散しよう。

「クレウスと先に教室に行ってるから」
「ああ」
そう言うと、ジョーが手を振った。

その腰にはやっぱりミレトスの手があった。
でも、おかしいくらい気にならない。
今日はすこぶる機嫌がいいから、何だって許せそうだ。

「ウツミ、いいことあったデスカ?」
「‥え?」
「いつもより、とてもスマイルしてマス」
「‥そ‥そうかな」

ジョーとミレトスをただ見ていたつもりだったけど、
どうやらいつの間にか顔がにやけていたらしい。
やばいやばい、と頬をごしごし擦る。

昨夜、ジョーと体を洗い合ってから、ごはんを食べた。
冷めきった天丼を食べながら、色んな話をした。

火曜に、俺に寄ろうとしてミレトスに腰を掴まれたこと。
俺と目が合ったら逸らされて、かちんときたこと。
水曜に、水族館でクレウスとのツーショットに嫉妬して、
ついミレトスの肩に手を置いてしまったこと。
でも、やっぱり俺のことが気になって、
ゲーセンいって猿のぬいぐるみを取ってくれたこと。

そして、電話で話せたのが嬉しかったと、
ジョーは照れながら言った。

「フォローするわけじゃないんだけどさ」
そう付け加えて、俺が抱いていたもやもやを消し去ってくれた。
だから、俺もクレウスとのことを話した。

俺は、ジョーとの日常が当たり前だと認識しかけていた。
これからは、ジョーとの日常と平穏に感謝していこう。
そういうことに気付かせてくれたケンカにも感謝しないとな。

とは思いつつ、ジョーに怒られて辛かったし、
ケンカなんてしないに越したことはないけどさ。

教室のみんなに挨拶しながら、いつもの席に腰をおろす。
「‥クレウス、今日もどこかに出掛けようか?」
「ハイ。それではボク日本酒飲みたいデス」

日本酒、か。
どこで飲めるか考えて、吉村さんを思い出す。
吉村さんがバイトしている居酒屋だったら、
それなりに種類があるだろうし、
なんと言っても、俺がほとんど日本酒を知らないから、
吉村さんに訊ねながら飲むのが無難かもしれない。

「‥うん。いいお店案内するよ」
「サンキュ」

そして。

今日の授業がクレウスとミレトスの最後の授業となった。

放課後、2人揃って校長室へ挨拶にいった。
その間を狙って、荒本がこっそり用意しておいた色紙に、
クラスで寄せ書きをする。
日曜の正午、見送り先の空港で、みんなで渡そうと決めながら。

教室に戻ってきた2人を入れて、デジカメやら携帯カメラやらで、
たくさん記念写真をとった。
2人にメールで送るのはジョーの役になった。

「めんどくさ」
とぼやきつつ、顔はちょっと寂しそうだ。

空港でまた会えるのに泣いてしまう女子もいた。
当事者2人は、笑いながら女子を慰めていた。
かと思えば、仁志や他の男子らと、騒いだり肩を組んだり、
みんなで寂しさを紛らわせて、はしゃいでいた。

そんな中で、あれっと思ったことを見つけた。

クレウスとミレトス、並んで立つけど、
話をしないどころか目を合わせることもなかった。
思い過ごしかもしれないけど少し気になった。

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