BLUE BIND

BL小説ブログ。危険を感じた方はお逃げ下さい。
  [ 青い空を見上げて2nd 37 ]
2010-07-14(Wed) 04:00:47
笹崎侑津弥


冷たい外気を浴びても、酔いが覚めない。
どうにか歩けるというレベルの遅いスピードで、
休みがてら公園へ行くことにした。
俺は、着いてすぐベンチに横たわった。
いつもの倍の重力を感じているのか、体がだるくて重い。
世界が、ぐらぐらと揺れている感じもする。
どうせ土曜は学校ないし、帰ってもジョーは家にいないし、
このままベンチで寝ていこうかな。

「大丈夫デスカ?」
「‥あ、うん。なんとか」
突然、クレウスが膝枕をしてくれた。
すると、くいっと俺の顎を上げて、キスしようとした。
今までのように頬ではなくて、明らかに唇を狙っている。

「‥うわっ」
力の入らない体を起こして、クレウスから遠ざかった。
いきなり動いたせいか頭ががんがんして、こめかみを押さえる。

そんな中でも、クレウスが危険なことだけは察知できた。
重い体でどうにか逃げ回るも、クレウスに追い付かれてしまい、
ジョーと初めてキスをしたすべり台の、台の下で、
ぎゅうっと強く抱き締められた。

「‥ちょ‥待って。何でこういうこと俺にしてくるわけ?」
「好きだからデス」

抱き締める力が強くなった。
一応、引き離そうとかなり力を入れてはいるけど、
頭がまだぐるぐる回ってるし、クレウスは力強いしで、
パワーのない俺はとても敵うはずがない。

「‥好きな人がいるって言っただろ」
「聞きマシタ」
「‥だから、クレウスとはこういうことできないって」

クレウスが嫌いってわけじゃない。
嫌いじゃないから好きなんだけど、だからって特別視できない。

トクベツは、ジョーだけだ。

「ウツミ、あそこ行くデス」
と、クレウスが指した先には、シティホテルのネオン。

ぞくっと身の危険を感じて、クレウスを突き飛ばした。
そして、走れる限り走った。
短距離走全国6位入賞、長距離走全国10位入賞、
ここでその実力を発揮しなければ、いつするんだよ。

ぼやける視界で闇雲にダッシュする。
すると、いつの間にか桜通りの入口まで来ていた。
見慣れた風景に安心して、ふっと立ち止まると胃が回り、
俺はそこで吐いてしまった。

吐くのは体の防衛本能が働いている証だ、
とジョーは言うけど、吐くのはやっぱり辛い。

誰かが背中を撫でていた。
静かに振り向くと、クレウスがいた。

スタミナが切れて逃げる力がもうなかった。
胃がまだちょっと苦しいのもあるけど、
さすがに吐いたあとキスは迫らないだろう。
ジョーでさえ、たぶん迫らないと思うし。

という考えは甘かった。
クレウスは、それでも俺に迫ってきたのだ。

「‥助けて‥ジョー‥」
思わず呟いた。

だけど、ここにジョーはいない。
ここにいるのは、俺をシティホテルへ連れていこうとする、
クレウスだけだ。

そのクレウスは、呟きに対して驚いた顔をした。
キスするのに近づけてきた顔を、ぴたっと止めるほどに。
そして、唇を硬く締め、悲しそうな顔になった。

こんな顔は初めてだった。

クレウスはジョーのこと好きなんだろうか。

酔って、走って、吐いて、凄まじい眠気が襲ってきた。
濃霧がたちこめているようなぼんやりとした視界で、
ジョーとミレトスの歩いている姿が、見えた気がした。
幻覚が見えるなんてかなり俺は重症だ。

「ウツミ?おい、どうした?」
ジョーの声の幻聴も聞こえきた。
幻覚に幻聴、次にくるのは何だろうと思っていると、
頬をぺちぺちと叩かれて、はっと目を開いた。

そこにジョーがいた。

本物かどうか確認したくて、ジョーに手を伸ばした。
瞬間、体ががくりと崩れ、なぜか意識が遠退いた。

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