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  [ 青い空を見上げて2nd 39 ]
2010-07-15(Thu) 06:20:20
阿久津城


ようやく家について、ソファにウツミを寝かせる。
「いいウエイトトレーニングになった」
汗びっしょりのマキはカーペットにぺたんと座った。
「悪かったな、助かったよ」
俺は、タオルと麦茶のコップをマキに手渡した。

「まあ、こういうのはお互い様ってな」
「近いうちに礼するから」
「そういうつもりで手伝ったんじゃないし」

マキは空にしたコップをテーブルに置くと、
汗を拭ったタオルをイスにかけて立ち上がった。
「ごちそうさん。じゃあ俺帰るな」
「ああ、玄関まで見送る」

ついていこうとしたら、あははと笑われた。
「いいって。それよりウツミ介抱してやれよ。じゃあな」
にかっと白い歯を見せながら、リビングを出ていったマキ。

スポーツマンとでもいうのか、さっぱりしたタイプだ。
何にせよマキがいてくれてマジで助かった。
それに、見返りを求めないタイプにほど何かしたくなる。
今度、手料理でも振舞おう。

と、感謝している場合じゃなかった。

俺は救急箱を探し、胃薬と水を用意する。
手にした顆粒の胃薬の袋をやぶり、ウツミの肩を叩くと、
ぼんやりと開いたウツミの目が、俺をゆっくり見た。
「ウツミ、寝る前に薬を飲め」

薬を見て、ウツミは丸まった。
「‥それイヤだ」

ウツミは顆粒の薬が苦手だった。
だけど、ここまで酔った挙句に吐いたなら、
二日酔いにも胃にもこれが一番効くんだ。

丸まったウツミの肩を、強く叩く。
「ほら、わがまま言わないで飲めって」
「‥イヤにゃ」
呂律の回らない言葉を発しながら、さらに丸まるウツミ。

イヤにゃなんて言っても下がるかってんだ。

俺は、薬と水を自分の口に含み、ウツミにキスをした。
胃薬を口移しで、ムリに流し込んでやる。

「‥ん、んんっ、んんんっ!」
ぽふぽふと俺を叩いて、ウツミは対抗していた。
だけど、酒を飲んだせいか力が弱く、蚊ほど感じない。

すると、薬の苦さがかなり口に来たのか、
ウツミは俺の首にしがみついてきて、ぬるりと舌を入れてきた。
アルコール臭いウツミを味わいながら、しばらく舌を絡ませる。

顔を離し、眠り落ちかけているウツミの頭を撫でていると、
ソファの下に手袋を見つけた。
マキのポケットから出てここに落ちたんだろう。
手袋を持って玄関へ急ぐと、スニーカーの紐を結ぶマキがいた。

「マキ、これ忘れ物」
「あ、悪い」
真っ赤になっているマキはわざとらしく横を向き、
俺を見ず手袋を受け取る。

キスを見たのか、とすぐ思い当たった。

「さっき何か見ただろ」
「いや」
「ウソつけ。目が泳いでるし顔も赤いじゃん」

マキは観念したのか、弱々しく白状した。
「ジョーとウツミが‥あの‥その‥」
「その続きは誰にも言うなよ」
「そんなの判ってる。言わないってか‥言えないっつーの‥」
「だよな」

マキを玄関で見送ってから、ウツミを見にいくと、
気持ちよさそうな寝息をたてていた。

俺はリビングに毛布2枚を持ってきた。
1枚はウツミに、1枚は隣のソファに横になった自分に、
それぞれかけた。

「おやすみ、ウツミ」

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