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  [ 決めたゴールを走れ 51 ]
2012-04-11(Wed) 06:00:00
「光のやつはどこ行ったんだ!」
監督がピットで怒鳴った。
広くはないピット内で、監督の怒声が反響する。
トイレを出た光さんが姿を消した。
ピットにもトイレにも、トランスポーターにも、
どこにも光さんはいない。

駐車場に、光さんの車もなかった。
きっともうサーキット場にはいないだろう。

ブレーキの最終調整どころではない。
監督命令で、今日のセッティングは中止し、
サーキット付近をみんなで捜索した。
だけど、車がないんだから見つかるはずがない。

夕方になって集合すると監督からの指示があった。
レーシングカーを予選前日用にセットしろとのことで、
俺も含めメカニック達は従った。
ドライバーのいないマシンをセッティングし、
黙々とオーダーを完成させていく。

徹夜でセッティングして翌日になった。

光さんはやはり現れなかった。

明日はもう予選だ。
監督もさすがに顔色がやばい。

とうとう、街中を探すよう指示が出された。
メカニックは、タイヤ交換のメンバーでチーム編成をする。
ってことで、ロリポップを持ってるチーフの俺は、
悲しいかな単独で動くことになった。

高そうなホテルに当たってみたり、
ホテルの周りにあるカフェを覗いてみる。
光さんが好きそうな服のショップを覗いたり、
ディーラーに目配りしてみたけど、
光さんの姿はどこにもない。

昼ごはんの前に、監督に連絡する。
どのチームも手がかりを掴めることができず、
あとはもう運に任せるしかない、
と落ち込んでいるような声で言われた。

携帯を切って青空を見ると、
笑っている光さんが浮かんだ。

何だかちょっと泣きそうになった。

昼ごはんを済ませてから、
日が暮れるまであちこちを探し回る。
デパート、アクセサリショップ、
ホームセンターにも行ってみたりした。
途中、光さんに似ている人がいて、
声をかけそうになって留まったっけ。

すっかり辺りが暗くなった。
車のライトが眩しい。
そんな時に携帯が鳴った。
目を擦りながら耳に当てると、監督からの連絡だった。
やはり、光さんは見つかっていない。

「自宅も実家も、判るところに行ってみたが、
 どこにもいなかった」
「そうですか」
「探すのはもう終わりにしろ、前澤」
「え?いいんですか?」
「ずっと歩き回って、お前もみんなも疲れたろう。
 明日のためにしっかり休息しろ」

明日の予選に、光さんがひょっこり戻るかもしれない。
そのために休めということだ。

「判りました。俺はホテルに泊まってないので、
 家にこのまま帰ります」
「ああ、そうだったな。明日は8時に集合だ。
 帰り道でもできれば光を探してくれ」
「はい」
電話を切って家路を行く。

俺は、光さんの携帯番号を知らない。
もちろん、メールアドレスもだ。
監督はとっくにメールしたり電話してるだろうけど、
こんなことなら聞いておけばよかった。

サーキットには、いつも光さんがいた。
それが当たり前になってて、
連絡手段を教えてもらうなんて考えがなかった。
光さんに逢えたら、機会を作って番号を聞こう。

途中のコンビニで弁当とかビールを購入し、
とうとうアパートに着いてしまった。
光さんの姿は、やはり見当たらなかった。
明日、サーキットに行きながらも探してみるか。

それにしても、歩き回って酷く疲れた。
弁当を食べてさっさと寝ることにしよう。

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