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  [ 銀の翼が恋を知る 10 ]
2012-08-18(Sat) 04:20:00
「なあ、リュウ」
突然、タツから切り出してきた。

ここは、人気のない公園。
この公園を横切ると、ショートカットになる。
そこを2人で、黙ったまま歩いていた。

「ん?何?」
「キスをしないか?」

突然の提案に、ぶはっと息を吐いた。
そして、ごほごほと咳き込んでしまった。

「は?何?何ていう罰ゲーム?」
「俺なりにリュウを励ませないか考えたのだ」
「それでキスすんの?」
「近頃の若者は、やったのやらないだのと、
 そればかりを気にしておる。
 俺はそんなものなくてもいいと思っていたが、
 恋人ならそれくらいして当然ではないか」

何を言いたいのかが俺に伝わってこない。
やったのやらないだの、というのは、
キスとかセックスとかそういうことなのだろうか。
ってか、どう考えてもそうとしか思えない。

伝わりにくいけどタツなりの慰めだ。
不安やいらつく要素があれば、
ムリをせず、ちょっとずつ取り除けばいい。
そんなタツの思いが伝わってくる。

いや、キスするのはいい。
タツから誘われるとは思わなかったけど、
これは大歓迎だった。

それよりも大事な問題があるだろう。

「ここで?」
「ああ、ここでだ」

人気のない公園にあるのは、薄暗い街灯だけ。
人はいないけど誰がいつここを通るかもしれない。
やめたほうが無難じゃないだろうか。

と思いながらタツみ見ると、目がマジだと言っていた。
こうなると、タツは言うことを聞かない。

「じゃあ、せめて草むら行こう。
 公園の中央は、マジでやばそうだしさ」
「了解した」

タツは俺の手を引かれ、俺達はいささか緊張しながら、
ベンチ脇の草木を通っていき、やがて向かい合った。
タツががっちりと、俺の両肩を握る。

「するぞ。いいか?」
「キスの前にするぞって言うか‥ん‥っ」

キスは、いきなりされた。

ムードも何もなかった。
びっくりするほど、あっさりとされた。

そして、くっついた唇はすぐに離れていった。
照れる間も、恥ずかしがる間も、
何にもなかったと思っていると、タツに睨まれた。
ファーストキスで睨まれるとは思わなかった。

「俺はリュウの何だ?」
「え?」
「交際しているのだから恋人であろう。
 辛いことも苦しいことも、抱えないで話してくれ」
「恋人だから?」
「恋人だからだ」

辛いことも苦しいことも。

もちろん、楽しいことも嬉しいことも。

仲間だから、恋人だから。

共有したい。

1人で抱えないで2人で抱えれば、
辛いことなら半分になるし、
嬉しいことなら倍増する。
タツからのキスで、俺はそう思えた。

「うん、サンキュ」
笑って言うと、タツも笑った。

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